007   最近感じたこと             2006年 皐月の頃



 緑の濃い季節になりました。5月の始めの連休はお天気にも恵まれ、多いに楽しまれた方もたくさんいらっしゃることでしょう。私もそんな陽気に誘われて栃木県日光へ行って参りました。
 日光には1980年代後半に5年ほど暮らしたことがありますが、ゆっくりと過ごすのは久しぶりのことでした。

 日光の街から車で15分ほど山へ入り、車を降りて15分ほど歩いた所で一日、山の空気を存分に吸って野鳥の声に耳を傾けて参りました。
 昨秋、葉が落ちて冬の間に枝だけになり、全体として灰色がかった茶色の山のあちこちに木々の新芽の緑と 「やしおつつじ」 や 「とうごくみつばつつじ」 の花が色を見せ始め、日光にも遅い春が訪れつつありました。







木々が芽吹く様子にはエネルギーを感じます。山椒も新芽をたくさんつけていました。指で触れると爽やかな香りが染みつきます。

ランチは持ち寄りの食材と山の恵み。山椒の新芽はフライパンでから煎りしてから塩味をつけ、摘んだこごみはさっと茹でパスタに和えます。
山の達人はパスタを茹でる際に塩を使いません。茹で上がった後の湯は山にこぼすことになるのですが、、塩を使ってしまうと土中に塩分が残ることになります。すると鹿などが塩を求めて本来の生息地域からはみ出して来てしまい、やがては山の生態系を崩すから、簡単に説明するとこうなります。

そこに住む生き物の日々の営みを邪魔してはいけないのですね。


そんなことを考えていたら、日光に住み始めた当初の事を思い出しました。

東京で育った私たちにとって日光での生活は得難い経験の連続でした。
月のない夜は目隠しをした様に暗いことも、逆に満月の夜の明るさも、耳の奥で鳴る「シーン」という音を経験したのも日光でのことでした。
先住民であった山の動物は、突然山を切り崩し造成して入り込んで来た私たちの元へよく顔を出しました。殊に夜、ガサガサと草むらを揺らす音や、鳴き声もずいぶん聞きました。
暮らし初めて間もない頃に1団の猿に家の周りを囲まれたことがありました。はじめは間近に野生の動物を見られた事に顔がほころびました。しかし、じっと何かを訴えるように地面に座り続ける猿たちを見ているうちに、山の生き物は私たちの出現を喜んでいない、ということに気づいたのです。猿たちはしばらくすると一斉に山へ帰って行きましたが、あれは勝手にテリトリーを犯して入り込んで来た私たちに 「早く出て行って下さい」 という抗議の座り込みだったのか、と思ってます。

動物も植物も私たちと同じ命、人間だからと傲慢にならずに、すべての命を尊重し、ものを大切にして生きていかなくてはいけないよ、と教えられた経験でした。








 
 話は変わりますが、この3月、私はロンドンを訪れる機会を得ました。
私にとって初めてのロンドンでした。






イギリスのすばらしいものに多く出会えた旅でしたが、ひとつ感じた事をご披露したいと思います。
それは、ヒースロー空港に降り立った時から感じたことでしたが、一言でいうならば「暗さ」です。
もちろん、人々の持つ 気持ちの暗さ という意味ではありません。
 ホテルの部屋にいてもロンドンの街を歩いても同じく暗さを感じました。確かに雲が低くたれ込め、今にも雨の降りそうなお天気の日が多かったのですが、主な原因は過度の照明がない、ということでした。駅舎もホームも照明は弱めに設定されているようでした。また、灯りの入った看板は余り見かけませんでした。店内の照明も日本のそれと比べると 「薄暗い」 ものでした。街に煌々と光る自動販売機も有りませんし、日本の明るいコンビニの様な24時間営業の店を見つけることができませんでした。ほとんどの店は夕方まで、遅いところで8時頃までの営業でしょうか。そのせいで街全体が暗く感じたのかもしれません。




体に感じる様な地震はほとんど無い、という条件の下ですが、街中に石や煉瓦の古い建物が残っていて、その上、修理しながら実際に人が暮らしている、ロンドンの街並みは本当に素敵なものでした。新しくて便利なものに価値を見いだすばかりでなく、古いものを大切に工夫して暮らす、こういうことが英国人の気質に影響を与えているのでしょう。限りある資源を消費してしまうことに豊かさを感じることなく、少々不便でも今有るものを大切に暮らす方が素敵だ!と思えるといいのですね。




ロンドンに1週間滞在し日本に戻ったらちょうど桜が満開を迎えていました。そのせいもあって、日本はとっても明るかったです。



欲張らず、慎しみ深く暮らすことを忘れてはいけない、そんなことを改めて感じた2006年の春でした。




最後に向島百花園で見つけた春から初夏の花をふたつご紹介します。 長々お読み下さりありがとうございました。


 
 芹葉飛燕草(セリバヒエンソウ)
  
 葉の形が セリ に似ていて、
 花はツバメが飛んでいる様に見えるから
 こんな素敵な名がついたのでしょうね。
 
日光黄菅(ニッコウキスゲ)  

日光に多く自生することから  
名付けられたそうです。     
本場の見頃は来月頃でしょう。 
東京の見頃はもう終わりに近いです。 


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